ミレーナとは?
ミレーナは、子宮内に挿入する避妊用の小さな器具で、女性ホルモンの一つである黄体ホルモンを5年間持続的に出すことができます(右図の真ん中の筒状のところから)。
黄体ホルモンの働きで月経血を減らし、月経痛を軽減させます。
ミレーナは自費診療で使用する避妊具でしたが、上のような副効用が認められたため、今回、新たに保険適応が認められたのです。
その保険適応病名は、過多月経(生理の出血が多い)、月経困難症(生理痛が酷い:近々保険適応)です。これによって、いままでよりミレーナの活躍の場が格段に増えました。
これは、月経血が多い状態を示します。
では、どのくらいの状態が過多月経か? これはなかなか難しい問題です。
ものの本には、月経血が140mlを超える状態とありますが、恐らく自分の月経血を測っている方はいないでしょう。他人と比較したこともないと思うので、自分の月経血が多いのか少ないのかよくわからないと思います。
そこで、現実的な指標として、I. 血の塊が出る、II. 検診などで貧血を指摘された事が有るといったような方は、過多月経である可能性が高いです。
次に、過多月経を示す代表的な病気を挙げます。
【明らかな子宮の病気が無いけど、月経血が多い】
これは、いわゆる通常の生理です。しかし、人によっては、それでも貧血になります。そんな場合は、ミレーナは非常に有効でしょう。ただし、子宮体癌等の悪性の病気が隠れている可能性が有るので、しっかり癌検査は受けましょう!
【子宮筋腫】
これは、非常に有名な病気で、右図のように子宮にたくさんのコブが出来る病気です。子宮筋腫があると、過多月経が起こります。
ただし、全ての筋腫で月経血が多くなる訳では有りません。筋腫は、出来る場所によって症状が異なります。
筋腫の種類
筋腫は、右図のように子宮のあらゆるところに出来ます。そして、出来た場所によって、症状が違います。過多月経を起こす筋腫は、(b), c, d, eです。すなわち、子宮の内腔に近いところに出来ると月経血が多くなります。これは、単純に子宮の内腔に近いところに筋腫が出来ると、子宮内膜の面積が増えるので、生理のときにはがれ落ちる内膜の量が増えるためです。b-eの内で、ミレーナの適応があるのは、b.cです。
d.eでは逆に出血が増えることがあるので、別の治療が必要です。
【子宮腺筋症】
子宮腺筋症は、子宮内膜症の一種です。子宮内膜は、通常子宮の内腔にあるのが普通ですが、どうしてだが、子宮の筋層に内膜症組織が紛れ込みます。そうなると、生理の時に月経血の行き場はなく、筋層内にとどまることになります。これは、非常に強い生理痛を引き起こす代表的な病気です。
そして、子宮が腫大していくととみに、子宮の内腔の面積が大きくなっていくので、過多月経も起こします。
子宮腺筋症に犯された子宮の断面図
右図は、子宮腺筋症のために、子宮筋層のところどころに穴ぼこが空いています。この穴ぼこには、行き場を失った月経血が溜まっていた跡です。
見るからに痛々しい感じです。
実際に、この病気は、強烈な月経痛を引き起こします。もし、あなたが非常に強い生理痛がり、生理の出血が多いなら、要注意です。
【明らかな子宮の病気は無いけど、生理痛がひどい】
生理痛の起こり方は、人それぞれです。そして、特に子宮に異常が無くても、生理痛が非常に強い人もいます。そのような場合ミレーナは非常によい適応になります。
【子宮筋腫】
子宮筋腫では、生理痛はあまりひどくないのが一般的です。
【子宮腺筋症】
子宮腺筋症は、強烈な生理痛を引き起こす代表的な病気です。また、この病気では、子宮の血流が悪くなるために血栓症が起こりやすくなります。したがって、低容量ピルの内服は、そのリスクを高めるために、あまり勧められません。したがって、ミレーナのよい適応になります。
月経困難症・過多月経の治療が大きく変わります!
上述のように、今年の9月に女性ホルモンを分泌する子宮内避妊具:ミレーナが過多月経に対して、保険適応になりました。そして、今月にも、月経困難症に対しても、保険適応になる見込みです。これにより、月経困難症・過多月経の治療が大きく変わります。
もし、あなたが生理のトラブル(月経困難症・過多月経)で悩んでいるとしたら、このミレーナが良い解決策になるかもしれません。
このミレーナは、一度子宮内に入れたら5年間効果が続きます。しかも、いままで8万円で販売していた物が、医療保険でお値段がグーンとお安くなって9000円に! なんと、85% offです。バーゲンだったら断然買いですよね。
病気で悩んでいる方に、バーゲンで例えるのは不謹慎でしたが、なにしろすごく安く使いやすくなった事をお伝えしたいのです。
ミレーナはどのように入れるのか?
ミレーナは3.2 X 3.2cmの小さい器具で、子宮の中に入れます(図1)。
したがって、ミレーナを使いたい時は、産婦人科に行く必要があります。
まず、内診台で診察を受け、特にミレーナを使わない方がいいような病気が無いかチェックします(後述)。問題なければ、子宮口より、産婦人科医が直接専用の器具を用いて子宮内にミレーナを入れます。ものの5分もあれば出来るでしょう。子宮内挿入時に、若干の痛みが有るかもしれません。が、麻酔はいりません。
ただし、ミレーナ挿入には適切な時期があり、生理終了後がいいでしょう。
挿入後には、ばい菌感染の予防で3日間程、抗生物質を飲む事になります。