なんと、腹腔鏡下筋腫核出手術に必要なモルセレーターを供給している最大手:ジョンソンアンドジョンソンが市場から撤退する事を決めました。
つまり、ジョンソンアンドジョンソン製のモルセレーターは、今後再発売はないということです(これは、私にも予想外の展開であり、正直、困っております)。したがって、当面、腹腔鏡下筋腫核出術は、小さな傷で出来ない状況となりました。
正、今後、モルセレータを使った腹腔鏡下筋腫核出手術ができないというわけではなく、ドイツの会社:ストルツのモルセレーターは引き続き販売は継続する模様です。その器械を所有している病院は従来と同じようにできると考えられます。もし、あなたがモルセレーターを使った手術を希望するのであれば、各施設に問い合わせてみることがいいと思います。
しかし、ストルツ製のモルセレーターの供給量は限られており、FDAの警告以降、品薄状態でストルツ製のモルセレーターは十分に出回っていません。日本医大でも、まだ、発注中で、手元にありません。患者の皆さんに多大な心配とご迷惑をおかけしている事は我々も痛恨の極みであります。
今後の我々の対応としましては、このページのラストにお示しした術式の工夫することで手術のクオリティーを下げない努力をして腹腔鏡下筋腫手術を継続する事になります。
ご迷惑をおかけして申訳ありません。(残念ながら、この決定に対して我々はなにも出来ません)
2014/8/22
これが、ストルツのモルセレーターです(ピストル型のデモ器)。
ストルツのモルセレーターはリユースタイプ(再利用可能)で、経済的。でも、いままではあまり市場に多くは出ていませんでした。それが、今回、ジョンゾンアンドジョンソンの市場撤退に伴い一気に注目を集めています。日本医大でも発注中ですがいつ入るのかは未定です。
これ迄の経過を知りたい方は、以下に説明しております!
急展開!カールストルツ(ドイツの会社)は、一度は販売停止を決定したモルセレーターの販売再開を行うようです。これにより、従来から、カールストルツの器械を使っている病院では、いままで通りの手術が出来る可能性が高くなりました。
正、日本では、ジョンソンエンドジョンソン(アメリカの会社)のモルセレーターの使用する施設が多いと考えられますので(当院を含めて)、引き続き、影響は大きく続くと考えられます。ジョンソンエンドジョンソンは、アメリカの会社ですので、FDAの勧告を無視できないと思いますので、しばらく、再開はしないのでは無いかと思われます。
また、新たな情報が入りましたらご報告致します。
今後、モルセレーターを使用出来る施設と出来ない施設が分かれるため、大きな混乱を招く可能性があります。しかし、モルセレーターがなくとも、様々な工夫により(このページの項目5参照)、良好な腹腔鏡手術は可能ですので、患者さんにおきましては、冷静な判断をお願いしたいと思っております。
2014/5/22
5/20の朝日新聞の三面に、子宮筋腫内視鏡手術に壁という見出しで、モルセレーターの販売停止の記事が掲載された。
販売停止になってからあまり経ってない現時点において、このニュースの大衆紙での発表自体が、ことの大きさを示している。
当施設においても、本日あたりから、患者さんからの問い合わせの電話が来るようになった。
このニュースは、一種のパニックを引き起こす可能性を秘めているので、慎重な対応が必要と感じる。
端的にその影響を言葉にするなら、
そして、この状況は、しばらく(数年単位だと思われる)続くので受け入れるしかない。
したがって、患者さんサイドの対応としては、
症状が強い方は、やはり予定どおり手術を受け入れるのが良いと考える。
もし、症状があまり深刻でない方は、手術を延期しても構わないかも知れない。ただし、いつ、この器械が販売再開されるかは全く未定。もしかしたら、再開されないかもしれない。
ただ、ここで注意したいのは、腹腔鏡手術と癌の関係を強調しすぎない事だ。朝日新聞の子見出しも”切除装置、がんをまき散らす恐れ”とあり、いささか患者さんの恐怖をあおりすぎる表現を使っている。ちょっと行き過ぎだ。
もともと、子宮筋腫や卵巣嚢腫で癌の可能性が考えられる場合は、腹腔鏡手術自体をしない。通常、子宮筋腫は、MRI等で明らかに境界が明瞭な腫瘍として見られるので、そんなケースは、先ず、良性に間違いない。
大きすぎる筋腫や、形がいびつな場合においては、悪性の疾患の可能性が出てくる。この場合は、MRIにても判断がつきにくい事もある。そんな時に、悪性が混在する事があるかもしれない。
女性の子宮温存と整容性のニーズの増加に伴い、大きすぎる筋腫に対しても、腹腔鏡をムリムリ適応するのは、今後は避けられるべきであろう。
何れにしても、FDAの勧告を受けて、今後は、腹腔鏡手術の適応は、もっと厳格になっていくだろう。その変化を示すとすると
と行った変化が現時点で予想される。
2014/5/20
腹腔鏡下筋腫核出手術を行うのに、体内で子宮から取り出した筋腫をどうやって体外へ取り出すか、皆さんわかるでしょうか?
なにしろ、腹腔鏡手術の傷は、大きくて2cm程度です。5cmとかの筋腫は、当然その傷からは出ません。
実は、モルセレックスのという1.2cm径の筒状のミキサーみたいなのがあって、それで、体内で筋腫を小さく砕いてから、体外に取り出します。すなわち、この器械がないと、小さい傷で筋腫手術ができないのです。
そして、このモルセレックスが、一時的(いつまでかわからない)ですが、発売中止になってしまいました。
すなわち、腹腔鏡下筋腫核出術が小さい傷で出来ないという事を意味します。
いくつかのメーカーがこの種の器械を販売していますが、同様の処置をとる可能性が高いとのことです。
ー追記 5/20 カールストルツも販売停止したため、全面的にダメになりましたー
なぜなら、アメリカのFDAから、その安全性に関して疑問が出されたのです。(メッシュ手術の時と同じように)
その理由は、筋腫と診断した患者さんの中に、極少数ですが(0.2~0.5%)、悪性の肉腫が隠れている事があるからだそうです。
もし、悪性の肉腫だった場合、肉腫を体内にまき散らす可能性が否定できないという心配からです。
ちなみに、肉腫は、手術の前に診断できないので、どんな手術方法をとったとしも、この危険性は逃れられません。
今後、どうするかは、FDAの専門家会議にて検討するとの事です。したがって、今後、いつの時期にモルセレックスの販売の再開が行われるかは、全く見通しがたたないという事です。
したがって、我々として、当面、腹腔鏡下筋腫核出術は小さい傷では出来ないと言わざるおえません。少なくとも、お腹の傷の一つは3−4cm程度の大きさは、必要になります。
当院では、いくつかの傷の目立ちにくい術式を行っていますが、それらを駆使して、(正、それでも、傷の一つは3−4cm程度の大きさはあります)この苦境を乗り切っていきたいと思っています。
情報が少ないため、新しい情報がでたらまたお知らせします。
立ちにくい術式を行っていますが、それらを駆使して、(正、それでも、傷の一つは3−4cm程度の大きさはあります)この苦境を乗り切っていきたいと思っています。
情報が少ないため、新しい情報がでたらまたお知らせします。
2014/5/14
日本医大では、今回の急なモルセレーターの販売停止を受けて、次のようなお知らせを患者さんに伝える事にしました。
【腹腔鏡下子宮筋腫核出術・子宮全摘術についてのお知らせ】
腹腔鏡下子宮筋腫核出術・子宮全摘術に使用する医療器械の一時的な販売停止に伴い、手術創の一カ所の大きさが、従来よりも大きくなります。急な販売停止決定のため、このような形で皆様にお知らせする事になりました。ご心配をおかけする事をお詫びいたします。
*この販売中止は全世界的な決定です。
【背景】
通常の腹腔鏡下手術は、トロッカーという筒状の器具を四個、下腹部に穿刺して手術を行います。従いまして、四カ所の手術創ができます。その内の一つは、約2cmと他の傷(約1cm)より大きく、そこから摘出した筋腫を体外へ取り出します。ただし、2.0cm以上の筋腫は、そのままでは体外へ取り出せませんので、モルセレーター(ジョンソンエンドジョンソン株式会社製品)という筒状のミキサーの様な医療器具で、筋腫を小さく砕いてから、体外に取り出します(子宮全摘の場合も、状況によってこのモルセレーターを使用します)。今回、このモルセレーターが発売中止となりました。従いまして、従来のような小さい傷で手術をする事が出来なくなりました。
【理由】
モルセレーターの全世界的な発売中止の理由は、アメリカのFDA(食品医薬品局)より、筋腫核出手術にこの器械を使用する事を推奨しないとの通知があったためです。その理由は、筋腫と診断した患者さんの中に、極少数ですが(0.1−0.5%、FDAのHPには350例に1例と記載されている)、悪性の子宮肉腫が含まれていたからです。子宮肉腫だった場合、筋腫を小さく砕くことにより悪性細胞を体内にまき散らす可能性が否定できないという心配から、この通知がなされました。
この通知を受け、ジョンソンエンドジョンソン株式会社は、一時的な販売停止(製品の回収ではない)を決定しました。その詳細はhttps://jnj.co.jp/professional/pdf/information_1405.pdf
に書かれています。
【対策】
モルセレータ−の販売中止に伴い、従来のような2.0cm程度の小さな傷で腹腔鏡手術を行うことが出来なくなりました。対応策として、2.0cmの傷を3.0-4.0cm程度に拡大して、
メスで筋腫を体内で細切して体外へ摘出する事になります。これにより、傷は少し大きくなりますが腹腔鏡下子宮筋腫核出手術を実施することは可能です(右の図は予想される腹腔鏡手術の手術創の例)。ただし、この手技を行っても、子宮肉腫を腹腔内にまき散らす可能性を除外できるものではありません。
【今回のモルセレーター販売停止に対する見解】
日本では、子宮筋腫の患者様の多くは、手術前にMRI画像検査等を受け、子宮肉腫等の悪性疾患の可能性を除外されてから、手術を受けるようになっておりました。したがって、今回のFDAの決定は、少しばかり行き過ぎの印象ではあります。しかしながら、手術前に子宮肉腫の可能性を完全には否定出来ない事もまた事実です。従いまして、腹腔鏡下子宮筋腫核出手術を希望される患者様においては、子宮筋腫と診断されていても、実際には子宮肉腫等の悪性疾患であるというリスクが存在する事を認識していただく必要があります。さらに、腹腔鏡手術を行う事によって、悪性細胞が腹腔内へまき散らされる可能性がある事を承諾していただいた上で、腹腔鏡手術を受けていただく事になります。
これらのリスクは、モルセレーター販売中止とは関係なく、従来から存在するものですが、今回の件を機会に、患者様によく認識していただくためにご報告させていただきました。
ご不明な点がございましたら、日本医科大学 女性診療科外来まで、ご連絡を御願い致します。
日本医科大学 女性診療科
多くの腹腔鏡下子宮筋腫手術を受ける予定していらっしゃる患者さんの最も気になるところというのは、
”じゃ、どうしてくれるの?”
という事であろう。
腹腔鏡下子宮筋腫手術には、新しい術式も含めいくつかのオプションがある。
それどれについて簡単に説明する。
3. 単孔式:この術式は、臍を4cm位きって、そこから腹腔鏡手術を行う方法。筋腫は、その臍から、メスで小さくきって取り出す。手技が煩雑で、大きな筋腫には適応できない。理論的には、傷が少ないので理想的であるが、実際には、術後に臍が変形、色素沈着等が起こし汚くなる事がままある。適応は慎重に。
4. 擬態式:当院オリジナルの方法である。傷を下腹部に分散させて(特に一つは、側腹部にいれるので、正面からは見えない)手術との連想を断ち切る方法。従来法と同様の操作性と適応の広さを持つ。正、モルセレーターは必要だったので、傷の一つは大きくならざる終えない。私は、これがお勧めだ。
以上の方法は、適応に制限があるので、患者さんが望む方法が適応できないことも多い。方法に関しては、日本医大であれば、主治医と相談して下さい。