ここでは骨盤臓器脱とは何かについて説明します。
左の図は、骨盤臓器脱の代表である子宮脱です。ごらんのように腟より子宮の先端が飛び出しています。実際の写真をご覧になりたい方は、wikipediaのページを見てください。リンクが貼ってあります。
それでは、これから骨盤臓器脱ついて説明していきます。まずは、骨盤臓器脱の種類です。
骨盤臓器脱には子宮脱以外にも右図のようにたくさんの種類があります。膀胱瘤、直腸瘤、腟脱等です。腟から飛び出してくる臓器によってその病名が変わります。ただし、細かい病名は患者さんにはあまり意味がありません(治療する医者にとっては重要)。骨盤臓器脱と覚えていただけばそれで結構です。
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骨盤臓器脱って?
骨盤臓器脱を一言で表すと、腟から、臓器が(ピンポン球みたい)飛び出す病気です。右の図は、子宮が飛び出した子宮脱です。
なんでなるの?
出産時に原因がある事が多いです。赤ちゃんの頭は大きいので、それが、産道を通る際に子宮を支える靭帯が損傷を受け子宮が下がり易くなります。
閉経を迎えると女性ホルモンの低下により、子宮を支えている靭帯がさらにもろくなり、子宮が下がってくるのです。
他にも、重たい荷物をずっともつことにより、腹圧がかかって、骨盤臓器脱になる方もいます。
つまり、骨盤臓器脱は、一所懸命に日本の発展に貢献した印:働き者の勲章!!!だといえます(有り難くありませんが・・・)。したがって、骨盤臓器脱を患ったからといって、恥ずかしがる必要は有りません。堂々と、病院にいって、診察を受けてください。現在は、いい治療法があります。
どうすれば?
保存的治療
手術療法
等があります。
右の写真がペッサリーです(サイズ:黒60mm、白59mm)。今は、殆んど白いペッサリーを使います。(黒いのは、今はもう売っていません)
このペッサリーを腟内に入れて、子宮等を持ち上げます。
どうやって治療法を選べばいいの?
先ず、保存的治療法が第一選択です。
この病気は、命に関わりのない病気です。したがって、骨盤臓器脱の診断がついたといって急いで手術する必要はありません。
仮に、医者に手術を勧められたとしても、良〜く、考えましょう。
また、手術を待ったからといって、手遅れになるような病気でもありません(限度はありますが・・・)。その状況によって、適した手術があるのです。
ですから、先ず、全ての骨盤臓器脱患者は、ペッサリーを試してみましょう!!!
ペッサリーというのは、直径5cmから8cm程度の細いドーナツ状のリングです。これを腟内に挿入します。
ペッサリーって痛く無いの?
男性の私からすると、こんな物を体のなかに押し込むなんて想像もできないのですが(痛そうで・・・)。実際には、みなさん、痛みも、違和感も感じない方がほとんでです。
ペッサリーってずっと入れておくの?
ペッサリーは、大体、4から6ヶ月毎に新しいのに交換しま
す。その間は、入れっぱなしです。
ペッサリーをいれて性交渉ができるの?
基本的に、いれたままでは、ムリでしょう。
ただし、ペッサリーには、自己脱着法というのがあって、自分で入れたり、出したりする事が出来ます。従って、夜寝るときは、ペッサリーを取って、朝起きたら入れるのです。ちょっと、練習すれば、可能ですので、一度トライしてみるのがいいでしょう。
⇒これが、出来ずに、もっと自由に性交渉を行いたいと思えば手術を選択する事になります。
いつ迄、ペッサリーをいれていればいいの?
骨盤臓器脱は、基本的に進行性の病気で放っておいてもなおりません。ペッサリーを入れておいてもなおりません。ペッサリーが具合いがよければ、ずっと交換する事が必要です。
ただし、時々、あんまりペッサリーが必要ない軽度な骨盤臓器脱にもペッサリーが使われている事があるため、たまに、外してみるのもいいでしょう。
ペッサリーは安全なの?
安全です。なにかあれば、すぐに取り外せるので、あまり悩まずに、トライできる治療法です。
ペッサリーによるトラブルは?
ペッサリーをずっと入れておくと、腟壁とリングがあたるところが、荒れて、出血することがあります。また、異物が、長期間腟内にあることにより、腟内のばい菌が増えて、オリモノが増える事があります。
⇒これらの症状が、許容範囲を超えた場合は、次の手段:手術を選択することになります。
ペッサリーは、誰にでもあうの?
ペッサリーを入れても、すぐに出てきてします人がいます。サイズが合っていない事が多いので、サイズを調整してもらってください。時々、腟圧が非常に強い方や、腟長が短くてリングが治まり切らない方がいます。また、違和感や痛みが我慢できないと感じる人がいます。
⇒このような方も、やはり手術を選択する事になります。
上の項目をまとめると、まず、全ての患者さんに、ペッサリーを試みてもらいます。そして、
のような症状がある人は、次に手術を選択する事になります。
手術には、大きくわけてメッシュを使わない古くから行われている従来法とメッシュを用いる新しいメッシュ法があります。
どちらの方法を選択するかは、担当する医師によってかなりさがあると思います。したがって、決まった基準はないといっても過言ではありません。従来法だけをする医師、あるいはメッシュ手術だけをする医師、本当に様々です。
したがいまして、ここでの指針は私見です。ただし、私自身、長い間、従来法とメッシュ手術両方の手術に携わってきた経験を踏まえての意見ですので、参考にしていただいてよいと思っています。
大前提として、メッシュ手術は、新しい革新的な手術です。
新しい革新的な技術は、優れた恩恵があるともにリスクも伴うという事を理解しなくてはいけません。したがいまして、メッシュ手術は、あくまで、最後の手段であると考えた方がいいと思います。要は、従来法も上手に使いながら、足りない部分を上手に、メッシュ手術でカバーするという姿勢が、優れた医師の条件です。
ですので、これから、骨盤臓器脱の手術を受ける方は、先ず、一歩、立ち止まって、自分にとって、本当に、手術が必要な程、現在の状況に困っているかどうかを十分に考えた方がいいという事です。特に、これからメッシュ手術を予定している患者さんにおいては。
ここで、強調して置きたいのは、メッシュ手術は非常に優れており、私が最も信頼を置いている手術であります。しかし、新しい技術ゆえ、予測できないリスクが存在するという事も認めなくてはなりません。
ですので、これから手術を予定している方は、繰り返しますが、現在の症状が何とも困っていて、ぜひ、なんとかしたいという気持ちがあるかどうか?が重要になってくるのです。
症状がないのに、医者に勧められたから、とか、若いうちにやっておいた方が体力的に手術に耐えられると思うからという理由だけであれば、再考の余地ありです。