現在、注目されている腹腔鏡下仙骨膣固定術を日本に初めて先進医療として導入した日本医科大学産婦人科講師:市川雅男がわかりやすく解説します。
【2016年4月に保険適応になった新しい手術】
この腹腔鏡下仙骨膣固定術は、骨盤臓器脱という膣から、子宮や膀胱、腸が飛び出る病気を治す手術です。
この手術の登場により、再発率が30-70%と言われていた従来の骨盤臓器脱手術が、ほとんど再発なく治療出来るようになりました。
この手術は、性機能(膣管)の温存を希望する骨盤臓器脱患者に適した方法。
どんな手術かというと、右上の図のように膣管の前後をメッシュという柔らかい網状のシートで覆い、骨盤上部の仙骨という部分に引き上げて固定する方法です。
手術時間は約3−4時間ぐらい。
腹腔鏡手術のため、痛みも少なく術後の回復も非常に早いという利点があります。また、入院期間も約1週間と短期間です。
【高度な内視鏡技術】
腹腔鏡下仙骨膣固定術は非常に優れた手術ですが、高度な内視鏡技術が必要です。手術を受ける際は、実績のある施設で受けることをお勧めします。右のビデオをビデオをご覧ください。
【腹腔鏡下仙骨膣固定術を受ける際の注意】
腹腔鏡下仙骨膣固定術は非常に優れた手術ですが、この手術を受ける際は次のことをよく理解してお受けください。
⑴ 一般的な手術に伴う出血、痛み、感染等のリスクを伴うこと。
⑵ メッシュという人工素材を使う手術であること。このメッシュは身体の中で溶けたりしないので、その効果は10年、20年、30年と長持ちします。ですので、途中で取り替えたりする必要はありません。
ですが、体内に長期間存在することによって、極稀ですが、感染や、痛みの原因となり、メッシュの除去することがあります。
⑶ 術後に尿漏れが悪化し、尿漏れに対する手術が必要となることがあります。(約5%)これは腹腔鏡下仙骨膣固定術だけではなく、骨盤臓器脱手術全般に言えることでが、骨盤臓器脱の手術をすると一般的に尿の出が良くなります。このことは本来とても良いことなのですが、年齢と共に、尿を止めておく力も落ちてきます。したがって、尿の出が良くなることによって逆に尿漏れが悪化してしまうことがあるのです。
以上のことを特に注意して、この手術を受けるようにしましょう。
【腹腔鏡下仙骨膣固定術の未来像】
腹腔鏡下仙骨膣固定術は非常に優れた手術ですが、一つ注意点があります。それは、上記の項でも述べましたが、メッシュという人工素材を用いるということです。メッシュを使うということその長所と共に、短所も取り込みます。したがって、短所を最小限にするためには、使用するメッシュの量を最小減にすることが薦められます。そこで、私どもは骨盤臓器脱患者さんの状態に応じて使用するメッシュをフィッテイングする方法:腹腔鏡下仙骨膣固定術ーフィットを確立しました。これにより、メッシュの効果を最大限にし、そのリスクを最小限にすることが可能になり、患者さんにより安心してこの腹腔鏡下仙骨膣固定術を受けてもらえるようになりました。
腹腔鏡下仙骨膣固定術ーフィットは日本医科大学にて受けられますので詳しくはこちらのサイトを訪問して下さい。
現在、腹腔鏡下仙骨腟固定術は、
新しい骨盤臓器脱治療として注目されています。
右は、2015年3月13日に発売された日刊ゲンダイの記事です。
新しい先進医療として腹腔鏡下仙骨腟固定術を紹介しています。
タイトルがなんと”体に優しい成功率100%の手術”です!過激ですね。
さすが、日刊現代の記者さんは、キャッチーな表現がお好きです。
尚、虚ろな目つき?で写っているのが私です。
腹腔鏡下仙骨腟固定術は、2014年7月24日に読売新聞に掲載されました。
私がその内容について解説しています。記事が読みたい方は、右のイラストをクリックしてください。
読売新聞のホームページ(Yomi Dr)にリンクしています。
2013年腹腔鏡下仙骨腟固定術のパイオニアとして、
新名医の最新治療に掲載させていただきました。
この術式が先進医療に認定されてすぐに、この記事に取れあげていただきました。これによって、腹腔鏡下仙骨腟固定術が一般の方にも知られる大きなキッカケになりました。
《適切な情報を得るためのアドバイス》
腹腔鏡下仙骨膣固定術の具体的な方法について知りたい方は、
こちらのページをご覧ください。
これから先は、腹腔鏡下仙骨膣固定術の先進医療認定とその歴史、そしてこの術式の普及のための最近の活動についてお話します。
この新しい先進医療である腹腔鏡下仙骨腟固定手術の特徴は
⑴ 性生活の維持に優れている(比較的若い方に適応)
⑵ 再発率が非常に少ない
であります。
したがって、閉経前後の比較的若い方、あるいは、性生活がある(今後希望)方には、この腹腔鏡下仙骨腟固定手術が向いています。
1️⃣ 従来式の開腹仙骨腟固定術
これは、以前日本において行われた開腹による仙骨腟固定術です。イラストのように、腟後壁の上部にメッシュを一枚使用します。前壁にメッシュの補強がないので、膀胱瘤等の再発が多い。
1️⃣ Y型メッシュによる腹腔鏡下仙骨腟固定術
従来式に比べると腟管上部の前後をメッシュで補強できる。しかし、まだ不十分で、最近、このタイプのメッシュでの手術後の再発が意外と多い事が報告された。
3️⃣ ダブルメッシュ腹腔鏡下仙骨腟固定術
今回、先進医療に認定されたダブルメッシュ腹腔鏡下仙骨腟固定術は、イラストのように腟管のほぼ全域をメッシュで補強できるため、再発が非常に少ない。
この術式の特性は
これらの術式を腹腔鏡下仙骨腟固定術の進化の中で考えると次の要になります。腹腔鏡下仙骨腟固定術の進化の方向性は、二つです。
①骨盤臓器脱治療の万能化
②手術の低侵襲化
という二つのベクトルに向かって進化してきました。したがって、ダブルメッシュ腹腔鏡下仙骨腟固定術は、進化の頂点にある万能性が高く、低侵襲な術式と言えます。
以上のような進化を遂げて、現在の腹腔鏡下仙骨腟固定術となりました。
市川雅男 (水曜日, 23 9月 2015 18:51)
以下のような質問を受けました。
→メッセージ: 産後9ヵ月38歳です。
1ヶ月前から、ビー玉くらいの大きさのが2つポコッと出ているのに違和感を感じ、産婦人科で診察結果、膀胱瘤と言われました。
尿漏れはないのですが、膣に違和感があり、毎日苦痛です。
完治するには、手術しかないのでしょうか?
手術はまだしない方がよいのか?今すぐでも手術していいのか?タイミングがわからないので教えて下さい。
メッセージ: 手術後は、再発は低いとありますが、
他の尿漏れや尿障害が出てくるのですか?
A. 毎日苦痛とのことー大変気の毒に思います。
結論をいうと膀胱瘤であれば手術でよく治ります。メッシュ手術であれば再発の確率も低くなります。確かに術後に尿漏れが悪化することもありますが、術後に尿漏れに対して再手術が必要なのは全体の5%ぐらいです。
手術効果は確かですが、30代では手術を行うタイミングは確かによく考えた方がいいと思います。
基本的には、今の状態がもう耐えられないと思う時が手術のタイミングです。
手術以外にも、ペッサリーというリングを挿入して症状が改善する人も多いです。ですので、まずペッサリーを試すのが良いでしょう。ただし、ペッサリーを入れた場合、性生活に支障をきたすので、自己脱着法といって自分で出したり、入れたりすることが出来ます。
その方法はちょっとと思われ、やっぱり根本的に直したいと思えば手術が良いでしょう。
以上の情報が何かのお役に立てればと思います。
ご自愛ください。