介護③ 母親と私と介護

母親と私と介護

 

いつまでも青春だと思っていた私も今年46歳になる。

私の母親は76歳ぐらいだろうか。

 

はっきりと年齢を覚えていない…。

 

最近、大分小さくなった気がする。

 

母親はお茶の家元で、茶道教室をやっている。

茶道教室は、母親が祖母から家元を継いだ当初は壮大だった。

家元の就任披露の際は、

恐らく何百人かは集まっていただろう。

 

それが、いまではお弟子さんが10人ちょっとだ。

 

後を継ぐものもいない。

 

時代の流れ…か。

 

最近、母親は大分小さくなった気がする。

 

練馬にある私の実家は、昔は200坪の豪邸だった。

その奥に立派な茶室があった。子供のとき、

そのにじり口(茶室にある小さな入り口)から

出入りするのが好きだった。

 

それ家も、遺産相続の嵐と息子の学費のために、

いまでは三分の一以下になった。

 

新しい家の一室が茶室になった。

 

日当りが悪いせいか、

この茶室は北国にように寒い。

母親は血の巡りが悪いせいか、

冬になると毎回手がひどい霜焼けになる。

 

その腫れた手でお茶を立てる。

 

暖房をいれればいいのに、

長い間に身に付いた節約グセのためか、

何度言っても、暖房をつけない。

寒くて暗い部屋の中にいる。

 

無理もない。

普通の家で(家だけは広かったが…)、

息子二人を私立の医学部に入れるのは並大抵ではできない。

 

お茶の家元なのに、

母親が着物を新調したのを見た事がない。

 

最近、母親は老人性うつかも知れない。

 

 

毎年、新年になると、

母親が主催する茶道教室の初釜が行われる。

 

今年は、1月10日だ。

 

今年も、私は参加する。

実は、昨年から参加している。

 

遅すぎである。

 

私の戦いはこれから始まる。