出産とリスク④

いま、産科医が不足している。

今後どんどん不足していくと思われる。

このまま行くと日本の産科医療も崩壊?

と本気で感じる。

 

今年の日本医科大学の入試の倍率は23倍越えらしい。

凄い数字だ。

ひとつの受験会場の80人で、3人ぐらいしか合格できない。

合格は神懸かり的だ。

 

これだけ、医者人気が高い中なぜ、産科医は減り続けるだろうか?

それは、

出産を扱う事のリスクが高い=産科医はリスクが高い

と皆感じているからであろう。

だから、産科医にならないし、辞めていく。

 

では、一体なぜ、産科医はリスクが高いのだろうか?

それは、日本は“出産を取り扱うシステムが古い”からだと思う。

 

出産はいつ何時、

帝王切開で赤ちゃんを超緊急に出してあげなければならない

瞬間が訪れるかわからない。

つまり、お腹の中で赤ちゃんの命綱が切れようとしている時だ。

 

いま、人手不足なので

大抵、当直は1人だ。

 

そんな時、一人ぼっちの産科医は何をしなければならないのか?

 

帝王切開をするには、麻酔がいる。

脊椎麻酔(あわてているとなかなか入らない)をして、

呼吸管理をしなければならない。

 

そして、帝王切開、普通は二人以上でやる手術を1人で…。

 

頑張って、赤ちゃんを出した後、赤ちゃんがぐったりしている!

赤ちゃんの蘇生が必要!挿管、挿管…。

 

その一方で、お母さんは手術のまっただ中。つまり、出が吹き出している。

血圧がどんどん下がっている!!!

 

想像してみてほしい。このような状況が目の前で起こり、

それを1人で何とかしなくてはいけなくなったら。

 

はっきり言ってベテランのスーパー産科医でも、身震いする状況だ。

まして駆け出しの産科医にとっては…。

 

ちなみに、大抵の市中病院は麻酔科の当直はいない。

呼び出して到着するのに一時間ぐらいかかる。

産婦人科の待機を呼ぶのにも一時間ぐらいかかる。

手術室の看護婦さんも家にいるので、呼びだすのに時間がかかる。

 

赤ちゃんの命綱が切れようとするその瞬間に、

産科医ただ1人しかいないのだ。

 

ちなみに、諸外国(オーストラリア等)では、

産科医が1人で麻酔をかけて手術をすることは法律で禁止されている。

危ないからだ。

 

でも、日本では、それが当たり前のように行われている。

それが、世界一安全という日本の出産事情だ。

 

また、海外の出産は、妊婦検診は町のクリニックで行い、

陣発したら中央の大きな病院にいく。

そこには、産科医が一杯当直しており、

麻酔科医も常駐している。

無痛分娩が希望であれば、

夜間でも頼んで5分でしてくれる。

 

それでも、海外では出産に関する訴訟は後を絶たない。

 

日本に必要なのは、スーパーな産科医ではなく。

スーパーな中央集権の出産管理システムである。

 

日本の産科医療が崩壊する前に。