The road of “神の手”⑤
腹腔鏡の手術は、通常の手術より難しい。
なぜかというと、
腹腔内で2本の鉗子
(物を掴んだり、切ったりする手術道具)
を自由自在に扱えるようになるのに
かなりの練習量と時間が必要だからだ。
私の経験からすると、
初心者が、ある程度納得できる手術操作が
可能になるには、
専門のチームでトレーニングを受けて、
3−4年はかかる。
私の所属する日本医大には、
低侵襲手術チーム(MIS)という
内視鏡の専門チームがあり、
(私は、そこを“内視鏡の虎の穴”と呼んでいる)
そこで、私は新人をビシバシ特訓する。
近年、なにかと、優しさが尊ばれるが、
そこには優しさはない。
求められるのはプロとしての技術だ。
できなければ、当たり前のように罵声が飛ぶ。
そこでは、
手術難度に応じた
トレニーングスケジュールがあり、
与えられた課題を確実にこなさなければ
次に進めない。
それができなければ、それまでだ。
内視鏡の手術は
全員ができる必要はないと私は思っている。
情熱をもって手術に取り組める人だけでいい。
そのコースの中で、最難関の
トレーニングが“腹腔鏡手術で鶴を折る”ことだ。
多分、一般の方は、
果たしてそれが難しい事かどうか
ピンとこないと思うが。
はっきり言って、かなり難しい。
私は、内視鏡手術のトレーニングの一環で
“鶴を1000羽折る”ことを目指している。
それが達成されれば、内視鏡を行う医師は、
神頼みではなく
自分で患者さんを治す“神の手”を
手にすると思っているからだ。
最近、私の後輩も内視鏡で鶴を折り始めた。
このトレーニングが全国に広がったら、
未熟な内視鏡手術による
悲しい事故は減ると思う。
もっと言うなら、
内視鏡の技術認定医を取るテストに
“腹腔鏡で鶴を折る”を取り入れたらいい。
と思う。
例えば、10分以内とか。
断言しよう、
内視鏡で鶴を10分以内に折れたら相当の腕だ。
これができたら、はっきり言って
どんな手術でも出来る。
全国に、数人いるかどうかのレベルだ。
でも、患者さんの立場からしたら、
“そのくらいのことぐらい出来るようになってから
人も身体を扱ってくれ“
と思うかもしれない。
私も同感だ。
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