次のような質問をいただきました。
骨盤臓器脱の患者さんより
私は4年くらい前からかなり大きい子宮腺筋症の治療をディナゲスト内服でしております。(三人出産、うち一人帝王切開)今年9月で50歳ということもありこのまま閉経を待つつもりでしたが、一年前にがん検査で引っかかり陰性ではありましたが定期検査が欠かせません。この様な子宮の状態です。更に最近、尿漏れと直腸りゅう(ウロギネ科受診済)にも悩まされています。子宮温存の尿漏れ対策TVMメッシュ手術を勧められ検討していましたが、先生の記事でダブルメッシュ腹腔鏡下仙骨腟固定術を知り、私に適用できれば、今までの症状、不安が一気に解決するのではと目の前が明るくなりました!幸運にも先進医療保険にも加入しています。果たして一度の手術で全てが改善されるのでしょうか?また何かリスクはありますか?
質問ありがとうございました。
答え:
一度の手術で全て改善できると思います。が、尿漏れは残って尿失禁手術を追加する可能性があります。
ダブルメッシュ腹腔鏡下仙骨腟固定術は、非常に応用範囲の広い手術です。骨盤臓器脱で出来ない手術はないと思っております。
というのも、腹腔鏡手術なので、子宮の摘出・温存・半温存は患者さんの状態によって自由に変えることができます。オーダーメイドが可能なのです。また、腟式に手術も追加できるので、直腸瘤も完璧に直せます。
それから、先進医療の件ですが、最近はほとんど腹腔鏡下膀胱脱手術(詳しくはホームページの記述を参照)という保険で適応可能なので、先進医療をカバーした保険でなくても大丈夫だと思います(ただし、施設によって違うので問い合わせは必要)。
リスクはというと、
手術時間が少し長く4時間ぐらいかかるので、あまり高齢の方にはオススメできません。ただし、当院での最高齢は84歳ですので、あくまで個人の体力次第ですかね。
もう一つ忘れてはいけないリスクは、手術にメッシュを使う事です。
メッシュはとっても優れた素材であり効果が長持ち(一生)しますが、人工の素材であるので、やはりリスクはあります。感染や痛みを起こした際は、一部切除したり、とったりしないといけないことが極まれにあります(これは、すべてのメッシュ手術に共通)。
あと、尿漏れのリスクです(これは、全ての骨盤臓器脱手術に共通)。
実は、腹腔鏡下仙骨腟固定術(骨盤臓器脱手術に共通)で尿漏れが治ることもあれば、治らないこともあります。ですので、治らない場合は後で尿漏れの手術(尿失禁手術)を追加することがあります(5〜10%の確率)。初めから、同時にやるという考え方もありますが、いまは二回に分けるという考え方の方が主流になってきたような感じです。当院も二回に分けます。というのは、手術で尿閉を起こしてしまうのが一番怖いので、尿失禁手術は、腹腔鏡下仙骨腟固定術後に、尿漏れが残った(悪化した)方にのみ行っています。
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