手術が必要なのは、どんなとき?

子宮内膜症に対する手術適応とは

子宮内膜症の手術適応は、はっきり決まっていません。

皆さんは不思議に思うかもしれませんが、ガイドラインにはっきりと記載されていないのです。

とういうのは、子宮内膜症という病気は、個人によってその状態が異なっており、同じ基準で判断できないからです。ですので、診察する医師の考え・手術の能力によって、その判断が異なります。ですので、受診する病院によって、すすめられる治療法が違う事がしばしば起こります。

 

それでは、皆さんも困ると思うので、ここでは、あえて基準を示します。

 

卵巣チョコレート嚢腫(卵巣が腫れた場合)

【ヨーロッパ】

  1. 卵巣チョコレート嚢腫が4cm以上では手術を勧める

【日本】

  1. 40歳以上で、4cm以上の卵巣チョコレート嚢腫では手術を勧める。
  2. 年齢に関係なく、10cm以上の卵巣チョコレート嚢腫では手術を勧める。
  3. 4cm-10cmの間の卵巣チョコレート嚢腫では、その他の条件を考慮して手術適応を考える。

                (日本産科婦人科学会より)

 

ヨーロッパの方がシンプルでわかり易いですね。

これを踏まえて私なりの手術適応を考えます。

1と2に関しては問題なく同感です。

さて、3ですが、私の考えは、いままで手術をされたことがない患者さんであれば、基本的には、先ず手術を考えます(ヨーロッパの考え方に近いです)。

その理由は、

 

①1%と低率ですが、癌の可能性が否定できない事。

②卵巣チョコレート嚢腫は、破裂し強い腹痛を起こす事。

③手術により妊娠する確立を上げる事が出来る事。

④手術を行う事によって、子宮内膜症の状態・重症度がよくわかるため、術後の治療方針が的確に立て易い事。(場合によっては、不必要な投薬も防げる)

 

等の理由から、4cm以上の卵巣チョコレート嚢腫のある患者さんには、手術という治療の選択肢としてお話します。

 

卵巣チョコレート嚢腫の再発

卵巣チョコレート嚢腫が再発した場合の手術適応に関しては、いささか厄介です。それこそ、各患者さんの状況によって判断すると言わざる終えません。というのは、卵巣チョコレート嚢腫の手術を何度もすると卵巣機能が徐々に落ちて、妊娠しづらく、さらには閉経してしまう可能性があるからです。できれば、手術は2回までとどめたいと考えます。

 

したがって、二回目の手術を実施する際には、その患者さんのライフスタイルを考えた上で、ベストの時期に、ベストの手術をする必要があります。ベストの時期というのは、たとえば、妊娠を強く望んでいるが、性交痛等の痛みで妊活に支障をきたといいたような時期である。

 

 

 

卵巣チョコレート嚢腫を伴わない子宮内膜症

実は、卵巣チョコレート嚢腫のない子宮内膜症もあります。これは、主に性交痛や、排便通、不妊といった問題を起こします。こちらの疾患に関しては、さらに手術適応ははっきり決まっていません。各先生によってかなり異なると思います。

 私の場合、手術するかしないかは、性交通の場合、痛みの強さ次第です。鎮痛剤等の薬でコントロールできるようなら様子を見ます。それで、コントロールが出来なきれば、手術を考えます。特に、性交痛で、悩んでいる方がいれば、精度の高い手術をすれば、かなり改善されるので手術を選択もよい判断だと思います。

 

不妊症のある患者さんにおいては、患者さんの意思によるところが多いです。観察腹腔鏡といって、お腹の中を覗くことによって、原因の探索が出来ます。もし、患者さんが、望めば手術を行います。データ上、癒着などをとると妊娠率が上がる事が報告されています。

 

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