ロボット手術の未来

 皆さん、ロボット手術というのを聞いた事ありますか?

いま、日本においてダビンチというアメリカから来たロボットを使った腹腔鏡手術が日本でも行われるようになってきました。先日、日本の産婦人科におけるロボット手術の第一人者の一人、近畿大学、万代教授(前京都大学、准教授)お話を効く機会がありました。その情報も含めて私見をお話しします。

どんな疾患にダビンチを使うの?

ダビンチは、腹腔鏡下で非常に細かい手術手技特に縫合操作が可能なので、難しい手術に向いています。例えば、

  • 前立腺癌(泌尿器疾患)
  • 子宮がん
  • 腹式メッシュ手術(仙骨腟固定術)

等です。

 ですので、我々がやっている腹腔鏡下仙骨腟固定術を症例的にはダビンチがやる事になる可能性が高いです。ただ、ダビンチは運用コストが高いので、全ての手術に適応することは現実的ではありません。

近未来(5年後)における婦人科疾患におけるダビンチの適応を大胆に予想(希望)するなら

 

悪性疾患:子宮がんはダビンチ

良性疾患:子宮筋腫等は通常の腹腔鏡手術

 

であろうとの事です。そして、10年後はきっと殆どロボットでしょう(私見)。

しかし、実際には…

ちょっと眠っているダヴィンチ

 上の写真は、日本医大の手術室においてあるダビンチです。

実際には泌尿器科で使用するぐらいで、それ以外はあまり稼働しておりません。

 なぜかというと、使用するための手段が非常に限られているからです。手術をするには費用がかかります。その費用をとる手段は,

  1. 国民健康保険
  2. 先進医療
  3. 全額自費 

のいづれかです。下にいくに従って、個人負担が高くなります。

 現在のところ、ダビンチで国民健康保険が通っているのは、泌尿器疾患の前立腺全摘術だけで、他は通っていません。そうなると先進医療と言う形で申請して、保険収載されることを願う事になります。しかし、現在、このダビンチを使った先進医療(B)申請のハードルが非常に高くなってしまいました。15例の経験(全額自費で)とその有効性を示す臨床結果が必要とのことです。ちょとかなりムリです。

 この全額自費というのは、ダビンチは高価なので、恐らく一回の手術にかるく百万以上かかるでしょう。患者が、全額負担するか、医療施設が研究目的ということで病院持ちで手術を行うと行った手段が取られます。いままでは、殆どの施設で後者が選ばれてきました。が、いまだに先進医療に認められず(まだ、申請のハードルも超えていない?)病院側も悲鳴を上げています。

したがって、ダビンチ手術の先進医療の道は開けていません。

日本では、いま少し腹腔鏡手術が主導

そういった事情で、日本においては、いま少し達人による腹腔鏡手術が主導で治療が行われる事になると思います。そして、今年、4月に腹腔鏡下子宮体がん手術が保険適応になりました。これによって、ますます、ダビンチ手術の先進医療が遠のきました。保険で出来るのに、高いお金を払って、自費でダビンチによる子宮体がん手術を受ける方はいないでしょうから。ただし、これは、患者さんにとって特に悲しいことではありません。ダビンチは、あくまで医者側のサポート(すなわち、腹腔鏡手術手技が十分でない場合)をするロボットです。従って、腹腔鏡手術が得意な先生であれば、ダビンチがなくても何ら問題がありません。実際、欧米でダビンチによる多数の死亡事故も報告されているので、患者さんは、まだ飛びつく必要がないと思われます。

だだし、

日本のガラパゴス化

日本人は、非常に手先が器用なため、腹腔鏡手術が得意な先生が非常に多いと思われます。しかし、世界では、上手に腹腔鏡で体内縫合する先生は少ないと考えられます。ですので、ダビンチが非常に流行っている訳です。

日本においてダビンチに基づいた臨床がすすまないと、将来的に日本の医療の世界に対する発言権が低下し、日本に医療のガラパゴス化を起こす事が心配。