2014年 4月 腹腔鏡下膀胱脱手術が保険収載されました!

《適切な情報を得るためのヒント》

この手術の内容は、実際には腹腔鏡下仙骨膣固定術とほぼ同じですので、具体的な手術の内容を知りたい方は、こちらのページをご覧ください。ここでは、主に手術に対する保険とか金額についての説明をしています


 新しくメッシュを用いた腹腔鏡下膀胱脱手術が保険収載されました。これにより、現在、メッシュを用いた公的補助がある骨盤臓器脱手術が、いままでの二種類から三種類に増えた事になります。これにより、メッシュを用いた術式が、より患者さんに身近なものになりました。

 

  • 経腟メッシュ手術(TVM法)
  • 腹腔鏡下仙骨腟固定術(先進医療)
  • 腹腔鏡下膀胱脱手術(今回、新しく保険収載)

どんな手術?

 この術式の概要は、メッシュを用いて腹腔鏡下に膀胱脱(瘤)を上に引っぱり上げる術式です。いままで、腹腔鏡を用いた公的な補助のあるメッシュ手術は、先進医療である腹腔鏡下仙骨腟固定術のみでありましたが、この腹腔鏡下膀胱脱手術の保険収載により、多くの骨盤臓器脱に対しても保険で手術が出来るようになりました。

 ただし、この保険の適応範囲は、各施設によって異なる可能性があるため、事前にかかりつけの病院に確認してください。

どんな骨盤臓器脱に適応があるの?

 この新しい腹腔鏡下膀胱脱手術の保険適応は、膀胱脱(瘤)を中心とした骨盤臓器脱です。したがって、解釈の違いはありますが、多くの骨盤臓器脱に適応が可能です。しかし、詳しい適応疾患は各施設に問い合せを!

新しい術式の患者負担金額は?

 腹腔鏡下膀胱脱手術の金額は、34万9800円(34980点)です。三割負担の保険ですと、患者さんの手術に対する支払い金額は、10万4940円となります。実際には、これに入院費等が加わるので、日本医大なら患者さんの支払い総額が、30万程度ということになるでしょう。

 

一方、いままでの腟式メッシュ手術は、手術費用が30万8800円で、同様な条件ですと、患者さんの支払い総額は30万弱でしょう。

 

先進医療である腹腔鏡下仙骨腟固定術は、手術費用は26万7000円で、これは全て自費になります。したがって、同様の条件ですと、患者の支払い総額は、45万程度ぐらいです。

 

経緯!

 この術式が生まれた経緯を説明します!先にも示しましたが、この術式は腹腔鏡下仙骨腟固定術の一部を保険適応にしたような形になります。通常の新しい術式の保険収載の道のりというのは、まず先進医療に認定され、いろいろな成績や情報を蓄積した上で、保険収載されるというのが流れです。

 

 しかし、先進医療である腹腔鏡下仙骨腟固定術が保険収載されるまでには、まだ時間がかかると考えられます。そこで、今回は拡大してきた腹腔鏡下仙骨腟固定術へのニーズに対応するために、腹腔鏡下膀胱脱手術という新しい術式を作成して保険収載へ至ったと考えられます。

 したがって、多くの骨盤臓器脱に保険診療として患者さんが恩恵を受けられるようになったのです。

 

慎重な普及が必要!

 今回の腹腔鏡下膀胱脱手術の保険収載により、腹腔鏡下メッシュ手術が、今後、さらに普及していく可能性があります。

 しかし、若干の心配がある事も事実です。

 

 私自身、この手術を2008年に開始してから、かなりの経験を積んでいます。その率直な感想は、この腹腔鏡下仙骨腟固定術は非常に難しい術式であるという事です。特に、メッシュという異物を体内に留置するといことは、大きなリスクなので、それに伴う合併症を最小限にするために、細心の注意が必要とされる難しい術式なのです。したがって、かなりの腹腔鏡手術手技の訓練とメッシュの取り扱いに慣れた医師によって手術がなされる事が望ましいと思っております。

 

 実は、アメリカのFDAによって腟式メッシュ手術の安全性の注意喚起が行われてから、日本においても腟式メッシュ手術から腹式メッシュ手術(すなわち腹腔鏡下仙骨腟固定術)に大きくシストしてきているのです。今回の腹腔鏡下膀胱脱手術の保険収載もその影響を受けての事です。しかしながら、私の経験からしても、腹腔鏡下仙骨腟固定術は、確かに優れた術式ではありますが、メッシュを用いるという事実は、腟式メッシュ手術と変わりません。したがって、今後、腹腔鏡下メッシュ手術が普及するためには、安全かつ慎重な手術の運用が重要であると考えています!