現在、骨盤臓器脱の治療というのは、産婦人科、泌尿器科医、そして、ウロギネセンターといったような主に3つの看板の元で先生が行っています。ウロギネというのは、尿失禁や骨盤臓器脱治療を専門とする新しい分野の事です(主に泌尿器科の先生が名乗っている事が多いように感じます)。ちなみに、私は産婦人科医です。それぞれの領域の先生が、骨盤臓器脱の治療を行っていますが、それぞれ特徴があります。
実は、骨盤臓器脱治療は、メッシュ手術が登場する前は、産婦人科医によって手術をされていました。したがって、産婦人科医にとっては、骨盤臓器脱は、むかしからある馴染みのある疾患でした。つまり、婦人科医は、メッシュを使わない従来法には昔から慣れていました。そこに、メッシュ手術も行うようになったのです。
一方、日本に最初に骨盤臓器脱治療にメッシュ手術を導入したのは泌尿器の先生です(2005年)。泌尿器医の先生は、尿失禁の治療に、既にメッシュを用いていたので、骨盤臓器脱治療へのメッシュ応用へ抵抗がなかったのでしょう。ですので、メッシュ手術の泌尿器科への先生への浸透は早かったのです。そこから、FDAの警告の影響等により、従来法も取り入れるようになったと感じています。
各領域における骨盤臓器脱治療の特徴
産婦人科医の特徴は、
泌尿器科医の特徴は、
ウロギネセンターの特徴は(元が、産婦人科医なのか、泌尿器科医なのかによって異なる)
と言ったような特徴があるのではないかと思っています。
(これは、あくまで、私見です…)
以上のようなポイントが重要だと思います。正、実際には、上の全ての用件を満たしている施設は、ほとんどないと思いますので、ご自身が重要だと思うところをいくつかピックアップして病院選びの一助にして下さい。
ここで、個々のポイントを解説をしますと、骨盤臓器脱は命に関わる病気ではないので、手術は急ぐ必要がありません。したがって、手術の時期は、皆さんが、自分にとって本当に手術が必要だと思ったとき(症状が困っている)、あるいは医師の手術必要性の説明に本当に合点いった時が、手術する時です。
また、メッシュ手術は、必ずしも、第一選択の手術ではないので、先ず、他の選択肢を考慮した上で、メッシュ手術を選択する事が勧められます。したがって、メッシュ手術を決める前に、治療方法の選択の提示を受ける事は重要です。
つぎに、医師が、メッシュという人工素材の扱い、そして合併症発症のリスクを良く知るようなるには、多くの手術をして、長い期間、丁寧に観察する事が必要です。それには、ある程度のメッシュ手術の数と、経験年数、丁寧なフォローアップをしてこなければ、その感覚は養われません。メッシュ手術は、非常に職人的な要素が強い手術なので、一朝一夕には、名人は出来ません。そして、通常の手術として、体内に入れたメッシュは、その後、ずっと皆さんの身体の中で、働きつづけるので、他のどの手術よりも、完璧な手術が求められますので、可能なら、名人の手術を受けた方が良いでしょう(たとえ、名人が手術を行っても、再発や合併法は起こりえます、それだ、骨盤臓器脱の治療は難しいのです)。
骨盤臓器脱は、非常に多彩な形態をとるので、一つの手術方法で、全ての骨盤臓器脱に対応するには、ムリがあります。従来法、腟式メッシュ手術、腹腔鏡下仙骨腟固定術などを、皆さんの状態に合わせてオーダーメイド的に組み合わせていく必要があります。したがって、治療手段が多いにこした事はありません。
最後は、当たり前の事ですが、この当たり前の事が出来る医者はなかなかいません(自戒を込めて…)。
以上のようなポイントが重要だと思います。正、実際には、上の全ての用件を満たしている施設は、ほとんどないと思いますので、ご自身が重要だと思うところをいくつかピックアップして病院選びの一助にして下さい。