非メッシュ手術

 非メッシュ手術とは、メッシュ手術が登場してくる前からある、従来から行われている手術である。今迄は、主に、産婦人科医によって行われていた。

 

①経腟子宮全摘術+α!

① 腟式子宮全摘術+膀胱高位固定術+腟壁形成術

私の総合評価 ★★★☆ 

  手術時間 2時間位

  出血 200-300ml?

  合併症 術後の尿失禁の増悪の可能性?

  入院期間 術後5-7日で退院

  保険適応あり。

  問題点:

  • 術後の再発率の高さが問題!
  • 術後の成績は、術者の技量によってかなり違う!
  • 術後に尿漏れの増悪の可能性あり! 
  • 高くないが、性交障害が起こる可能性もあり

  

  長所

  • 昔からの王道!
  • 術後の子宮癌の心配なし!

 

この術式に内容をもっと簡単にいえば、腟から、子宮をくり抜き、腟壁の前後の垂れ下がった部分を縫い縮めるという術式です。

 

 この術式は、従来は日本における骨盤臓器脱治療の王道であった。私が、産婦人科医にデビューしたころ(20年近い昔)、骨盤臓器脱といればこれ、これといれば骨盤臓器脱と言う感じであった。逆にいえば、これ以外の治療は、教わらなかったといっても過言ではない。

 

 では、現在におけるこの術式の立ち位置は、というと、やはりメッシュ手術の有効性に押されて登場機会が減っていると言える。その理由は、再発率が30−70%と高いからである(もっと低いという反論もあるが・・・)。

 

 私の意見は、この術式は、やっぱり、軽度の子宮脱単独の骨盤臓器脱には良いと思うが、重度の子宮脱や、膀胱瘤を合併している症例については、向いてないと考えている。

再発を押さえるために、あんまり腟壁を縫い縮めると腟長が短くなったり、腟入口部が狭くなったり、性交障害を引き起こす可能性もある。

 したがって、現在、私自身、あまり、というか殆どやっていない。

 

 

 

②腟閉鎖術

 以前、私はこの腟閉鎖術にかなりの偏見も持っていた!

腟を閉じてしまうなんて、なんて、非人道的な手術なんだと。

 しかし、現在は、今後の性交渉を望まない患者にとっては、非常に優れた効果を持つ手術であると実感している。したがって、かなりの頻度で実施し、また、条件のあう患者には薦めている。

 

私が、行っている腟閉鎖術は、主に二つである。

① 部分腟閉鎖術+肛門挙筋縫縮術

私の総合評価 ★★★☆☆ 

  手術時間 1時間位

  出血 殆どなし

  合併症 術後の尿失禁の増悪の可能性?

  入院期間 術後4−5日で退院

  保険適応あり。

  問題点:

  • 術後の性交渉ができない!
  • 術後の子宮癌検査ができない!
  • 子宮に分泌物等がたまる可能性あり!
  • 術後に、尿漏れの増悪の可能性あり! 

  

 これは、子宮のある方は、腟壁の前後を縫い縮めるだけ。非常に低侵襲。合併症等で長時間の手術が難しい患者に適応がある。

 ただし、その際、子宮が奥に取り残されるので、子宮頸癌・体癌の検査が出来ないと行った問題や、子宮の中に分泌物が貯まるなのど、すっきりしない部分がある。

したがって、この術式は、あくまで、長時間の手術が向いていない患者に対して行っている。

 

② 経腟子宮全摘術+全腟壁閉鎖術+肛門挙筋術

私の総合評価 ★★★★★ 

  手術時間 2時間位

  出血 200-300ml?

  合併症 術後の尿失禁の増悪の可能性?

  入院期間 術後4−5日で退院

  保険適応あり。

  問題点:

  • 術後の性交渉ができない!
  • 術後に、尿漏れの増悪の可能性あり! 

  長所

  • 術後に、子宮癌の心配がない!
  • 再発の可能性が非常に低い!


 我々がやっている術式は、様々な工夫の結果、現在の形にたどり着いた完成度の非常に高いもので、かなりの自信作です。今後、性交渉の必要性が全くない患者に対しては、最適です。ただし、人生において、どんな出会いがあるかわかりませんので、現時点で、性交渉の必要性がないといって、安易に、この手術を選択するものではあんません。この術式を一度したら、二度と性交渉はできませんので!!! この術式はどこでもやっている訳ではありません。多くの施設で行われているのは、上で紹介した部分腟閉鎖術だけだと思います。この術式単独だと意外に再発し易いのでご注意を!

 

 

③仙棘靭帯固定術

私の総合評価 ★★★☆☆ 

  手術時間 三十分位

  出血 殆どなし

  入院期間 術後4−5日で退院

  保険適応あり。

  問題点: これ単独では、補強が弱いので他の術式と併用という形で行っている。

 

 これは、膣後壁(小腸瘤・直腸瘤)の下垂に行う術式です。方法は、腟後壁の粘膜の一部をフラップ状にして、腟の後上方にある仙棘靭帯というところに糸でつり上げる方法です。昔からある非メッシュ手術です。我々の施設では、この術式単独で行う事は余りありません。膀胱瘤に対して前壁メッシュ手術を行う時に、後壁の下垂が認められるときに、追加する形で行う事が多いです。

 

③その他

 実は、従来法というのは、非常に多様な術式があります。

それらは、限られた状況で使われるので、個別対応になります。したがいまして、ここでは割愛します。